「不思議なおもちゃ」

私の祖母の家は狛江にあったので、「狛江のおばあちゃんち」と呼んでいました。
だいたい夏になると狛江のおばあちゃんち、へ行きました。
今はどうなっているかわかりませんが、駅からしばらく歩いて学校やグラウンドを抜けた先の一戸建てが立ち並ぶ住宅街にありました。
夏休みになると遊びに行き、テレビを見たりおもちゃや雑誌を買ってもらったりしていました。

小学校低学年よりも昔だったはずですが、2回くらいおばあちゃんちの近所の女の子と遊んだことがあります。
囲いのない、小さな松なんかの庭に植えるような木が生えた土地で土の小山をいじって遊んでいたらその子も遊びはじめて、どちらからともなく話しかけたのだと思います。年も同じくらいでした。
名前は聞いたのでしょうか、憶えていません。
その子も夏休みで遊びに来ていたのか、元々住んでいるのかよく分かりませんでした。
でも一度だけその子のいる家に上がらせてもらう機会がありました。
しばらくおままごととか、おはじきとか、そんな事をして遊んでいたのだと思います。
そろそろ夕方になるという頃、その子がおもちゃを色々と引っ張りだしてきました。
その中に1つ、小さな炊飯器のような、箱のような、いかにも子供向けのおもちゃという風合いの物があって、それをちょっと自慢げに見せながらその子は言いました。

「この中に紙と水を入れるとケーキができるんだよ」

私は、ケーキができるってどういうことなんだろう!と、とても興味が湧きました。
「見たい見たい!」
と言って、まずは紙を小さくちぎらないといけない、と言うのでさっそくその辺にあったチラシを裂いていたところでした。
ちょうど私の母親が迎えに来てしまったのです。
どうしてもケーキが見たかった私は、ケーキができるから見たい、と訴えましたが、できるわけないでしょう、ご飯の時間だから、と強引に帰らされてしまいました。

それからずっとケーキのことが気になっていました。次に会ったら絶対に見せてもらおうと思いましたがその夏はそのままその子に会う事なく夏休みが終わってしまいました。

そのあと何度かおばあちゃんちへは行きましたが、二度とその女の子に出会うことはありませんでした。名前も憶えていなかったし、敢えてその女の子のことを聞く事もありませんでした。

あのおもちゃは、本当に糊状か何かのケーキのようなものが出来上がる箱だったのでしょうか?それともその子は私に軽い嘘をついて遊んでいたのでしょうか?

真実を知りたいような、知りたくないような出来事ですが、なぜかこうしてたま~に思い出します。
少し検索してみましたがそれらしいおもちゃは見当たりません。

オチはありません。

モヤっとするでしょう?(笑)

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